CE情報No.3

品質事故の発生は適正作業で未然に防止を‼
麦類赤かび病の発生状況と防除対策の徹底について

 4月中旬以降、赤かび病の発生に好適な気象条件が断続的に出現しており、発生が県内各地域で確認され、その初発見日は4/26と平年(5/9)と比較して10日以上早い。多発が懸念されることから、病害虫発生予察注意報第2号「麦類赤かび病多発のおそれ」が4月23日に、防除情報第1号「麦類赤かび病の発生状況と防除対策の徹底」が5月1日に県病害虫防除所から発表されています。

 『びわほなみ』では、散布2回目の7~10日後頃に3回目の農薬散布を実施しましょう。『びわほなみ』以外の小麦品種では、散布1回目の7~10日後頃に2回目、六条大麦では散布2回目の7~10日後頃に3回目の農薬散布を実施しましょう。

 共同乾燥調製施設等においては、荷受け段階において目視によるチェックを行い、赤かび病被害粒が多く見られた場合は必要に応じて仕分けを徹底しましょう。また、赤かび病被害粒が混入しないよう、粒厚選別、比重選別等により調製を行い、DON含有濃度の低減(1.0ppm未満)を図ることが重要です。

粒厚とDON含有濃度の関係は、必ず一致する訳ではありませんが、粒厚が薄いほどDON含有濃度が高い傾向にあることが確認されています。

Ⅰ 品質低下防止対策
(公益財団法人 農業倉庫基金 技術参与 元木 則彦 氏の『麦の乾燥・貯蔵の留意点について』より抜粋)

1. 収穫時

① 製粉歩留まりは、デンプンの集積が終わる黄熟期前期からほぼ一定で、これ以降は収穫可。

② 初期の粒は皺(しわ)の切れ込みが深く、粉の灰分含量が高くなり製粉性が劣る。
刈取りは粉の色調がよい完熟初期(水分25%以下)が良いが、一般的に収穫開始は、水分28~30%以下から。

③ 黄熟期以降、水分が急激に下がる時期に降雨に遭うと、吸水して品質が低下。
2~3日以上の降雨、連日より隔日、夜間よりも昼間の降雨で品質低下が大。

④ 品質事故は脱穀障害(圧ペン粒など)や一時貯留中のムレが一因となる。
刈り取った麦はなるべく早く(2~3時間以内)施設に搬入し、乾燥する。

2. 荷受時

次のように品質をチェックする。

① 発熱
➡ 手の感触で判断。

② 発酵・異臭
➡ 嗅覚で発酵・腐敗臭をチェック。

③ 穂発芽粒
➡ 目視によるが、目で確認できるほど発芽していないが、穂先が膨らみかけているものは品質に影響する。荷受前検査員には熟練した人が良い。

④ 着色粒
➡ 赤かび粒をチェック。

⑤ 水分
➡ 麦の収穫期は高温・多雨、雨天の翌日に晴れると、午前と午後では荷口ごとの平均水分が10%以上違うことがある。粒ごとにはさらにその差は大きい。この差は乾燥するだけでは解消しにくく、特に17%で半乾貯留すると品質上のリスクが高い。荷受時に水分仕分けをできる範囲で実施する。

3. 一時貯留

① 一時貯留時の小麦の胚乳への影響は、水分45%では貯留1時間で変色し白度が低下。

② 水分25%程度までは時間経過とともに白度が低下、水分25%以下ではほとんど変化なし。

③ 特に麺用(うどん)に使用される小麦は、変質・異臭のみならず、白度の点からも高水分のものは、貯留時間に注意。

4. 貯留ビンでの予備乾燥、貯蔵乾燥

① 最も重要なのは安全風量比の確保。

② カビや異臭を発生させない風量比は、水分35%の小麦の場合、0.1㎥/秒・100㎏程度、この場合、堆積高さを50㎝積むには、200mmAqの圧力を要するが、実際にはフロアの通風抵抗(送風ロス)を加味して、30~40㎝の堆積高さにすることが必要。

5. 乾燥時

 小麦の加工上の品質が低下する前に、発芽率が低下する傾向があることから、高い発芽率を維持できる乾燥をする必要がある。発芽率の低下を5%程度許容する場合、乾燥開始時の水分と送風温度との関係は概ね次のとおり。

水分 40%以上:40℃以下

   30~40%:45℃以下

   25~30%:45℃~50℃以下

   20~25%:50℃~60℃以下

 粉色と乾燥

① 乾燥時の未燃ガスやススの付着よる粉色低下のほか、高水分時に高温乾燥すると、皮が硬く脆く(もろく)なり、製粉時に粉に混入して粉色が悪くなる。降雨後の麦は、送風温度45℃で粒の皮部が脆弱化(ぜいじゃくか)して、粉の灰分含量を増加させ、粉色が悪くなる。

② 水分30%以上の高水分から乾燥する場合、初期40~45℃、中期50℃、水分が20%以下になったら55℃以上に上げる「逐次(ちくじ)昇温乾燥」がよいとされる。

③ 高水分小麦や付着水がある小麦を連続送り式乾燥機で乾燥する場合、最初の1~2パス時には極端な熱風温度を避け、低温(晴れた日などは通風のみ)で乾燥する。水分が25~30%以下になったら通常の乾燥に戻す。

④ 水分30%以上では長時間のテンパリングを避け、3時間程度になるよう張込量を調整する。

6. 半乾貯留時

① 麦の乾燥時期は気温・湿度が高いので、原則半乾貯留はしない。やむを得ず実施する場合、水分17%以下を厳守。荷口ごとの水分で5%以上の差があるものが混合されている場合、15%以下にする。小麦は、最終的には熱風温度を高くして乾燥することが多いため、穀温も高いので外気温度に関係なく、必ず冷却パスをしてからサイロに入れる。半乾貯留日数は3日以下とし、乾燥機が空き次第、仕上げ乾燥する。

② サイロ冷却装置で穀温を下げる場合、小麦は籾より密度が大きく冷風がサイロ内を通りにくいため、全体が冷えるまで時間がかかる。一度に張り込む量は少なめにする。

③ サイロ内の穀温監視は複数人で確認し合い、穀温上昇の兆候が見られた場合、サイロ内を目視確認して、ローテーションまたは仕上げ乾燥する。麦の異臭発生は意外と早い時期に起こることに注意。

7. 貯蔵時

① 麦の貯蔵開始時期は気温・湿度とも高いので、外気温が下がる時期にローテーションし、穀温を速やかに20℃以下にする。籾の乾燥・調製や清掃に時間を取られ、小麦は高穀温のまま冬を迎えている例も多い。

最低限、次の作業は行う。

・ 仕上げ乾燥は、水分のバラツキがなく11.5%(品位規格は12.5%)。こまめに水分測定し、できれば単粒水分計で水分のバラツキを把握。

・ 麦の乾燥終了後、籾の荷受け開始までの天気の良い日に、乾燥機で常温通風しながらローテーションする。

・ できるだけサイロを満杯状態にする。

② 籾の乾燥・精選作業が終わり次第、麦のローテーションを行い、水分測定して品質を確認する。穀温を十分低下させた後、サイロ投入口、マンホールなどを密閉し、極力外気に触れさせない。

③ 貯蔵中の穀温は全点記録し、グラフ化して監視する。

④ 麦の貯蔵時のサイロ内の平衡湿度(湿気平衡)は籾より低く、水分が13%(大麦)では 61%、水分12%で55%程度になる。微生物の生育湿度は、低湿性菌群でも65%以上なので、貯蔵時は籾に比べて比較的安全と見られてきた。しかし近年、貯蔵中に異臭事故が発生し、事故原因は「平均水分は12.5%以下でもバラツキが大きかった」「高穀温での貯蔵時期があった」ことが考えられた。

⦿ 穀温の高い状態が続くことは絶対に避ける。

⦿ 外気温が下がる時期に、ローテーションして穀温を下げる。

⑤ 貯蔵穀温が高いと、外気温が下がる 秋~冬場にサイロ内で空気の対流が生じ、穀層内の温かい空気がサイロ中央部で上昇し、上層部の冷えた穀物に触れ結露するため穀物が吸湿して高水分の部分が上部にできる。これを防ぐにはローテーションで穀温を外気温に近づける。

Ⅱ 調製機による赤カビ除去の可能性

1. 粒厚選別

 調製は、屑粒等を除去し品質や等級を向上させるための作業であり、農産物検査規格の基準値を目安に行う。被害粒の混入は1等では5%以内でこのうち発芽粒は2%以内、黒かび粒は5%以内、赤かび粒は0.0%(0.05%未満)となっている。
 粒厚選別機は未熟粒や農産物検査にて充実不足と判断される子実(細麦等)を除去する選別機で、篩目は2.2~2.4mmの範囲で使用されることが多い。

2. 比重選別

 比重選別は発芽粒、赤かび粒、包皮粒、異種穀粒などの低減を図る工程である。農産物検査規格では、1等の容積重は780g/Lが最低限度となっている。赤かび病菌が産生するかび毒であるデオキシニバレノール(DON)の濃度を比重選別機により一定程度低減できることが報告されている。DON濃度と容積重に相関があることを利用して、比重選別機の仕切り板位置を調節することにより、赤かび粒を一定程度取り除くことができる。

3. 光学式選別

 小麦の赤かび粒は、近赤外域全般における透過率が健全粒よりも小さくなっていることから、近赤外線センサを搭載する光学式選別機(色彩選別機など)を活用して赤かび粒を一定程度除去できる。

以上