CE情報No.3

麦類の赤かび病を適期に防除しましょう‼
早刈り、刈り遅れは品質を低下させることから適期収穫を

 麦の刈取適期は、子実水分30%以下になる時期で、小麦では成熟期から2~4日後、大麦では1~3日後に行い、ビール麦では発芽勢を確保するため子実水分25%以下で収穫をお願いします。
“観測史上最も暖かかった3月”に続き4月も暑さが続いたので生育が平年より10日程度早まっています。防除時期が遅れないように適期防除を徹底しましょう。

【気象経過】

彦根気象台、平成25~令和4年の平均値との比較出典:滋賀県農業技術振興センター 麦生育情報No.6

期間 平均気温 日照時間 降水量
4月 上旬 高い やや多い やや多い
中旬 高い 少ない 平年並
下旬 やや低い やや少ない かなり多い
5月 上旬 平年並み 多い かなり多い
(注)

平均気温 <±0.5℃:平年並、±0.5~1.0℃:やや高い(低い)、±1.0~2.℃:高い(低い)、±2.0℃<:かなり高い(低い)

日照時間 <±5hr:平年並、±5~10hr:やや多い(少ない)、±10~15hr:多い(少ない)、±15hr<:かなり多い(少ない)

降水量 <±10mm:平年並、±10~20mm:やや多い(少ない)、±20~30mm:多い(少ない)、±30mm<:かなり多い(少ない)

【麦の生育状況】

「農林61号」は平年に比べ、茎数はかなり少なく、草丈は長い。

「ふくさやか」は平年に比べ、茎数はやや少なく、草丈はやや長い。

「びわほなみ」は平年に比べ、茎数はかなり少ないが「農林61号」と同程度である。また、草丈はやや短い。

開花期は各品種とも平年よりかなり早く、「農林61号」は4月16日(平年に比べ9日早い)、「ふくさやか」は4月12日(平年に比べ10日早い)、「びわほなみ」は4月12日(平年に比べ7日早い)であった。

【県内の状況】

 3月から4月中旬にかけて気温が平年より高く、出穂期、開花期ともに平年より1週間程度早まっている。病害虫発生予察注意報第1号「小麦赤かび病多発のおそれ」が4月27日に県病害虫防除所から発表され、4月下旬から5月上旬は降雨が多く、現時点での赤かび病の発生ほ場率は平年より高くなっています。
 現在、水稲の田植え時期で、大変お忙しい時期ではありますが、良品質麦が生産されますよう下記事項にご留意の上、対応をお願いします。
 出穂や開花の状況を良く観察し、ほ場・麦種ごとの防除適期を逃さないよう、防除を徹底してください。
 薬剤感受性の低下を防ぐため、FRACコードの異なる薬剤をローテーション散布する。
 不稔粒が発生したほ場は、赤かび病多発のおそれがあるため、追加防除を実施する。
 防除適期は水稲作業の繁忙期であるが、薬剤散布は散布時期が重要なため必ず行う。

二条大麦(閉花受粉性)における葯殻抽出と葯殻抽出時接種による発病の様子 二条大麦(閉花受粉性)における葯殻抽出と葯殻抽出時接種による発病の様子

黒矢印で葯殻を示す。品種:ニシノチカラ(左端と中2枚)、ダイセンゴールド(右端)。

図1 二条大麦(閉花受粉性)における葯殻抽出と葯殻抽出時接種による発病の様子

麦の荷受け・乾燥・貯蔵作業の留意点
(全国CE協議会「CE情報」№159号(令和5年3月)より抜粋)

1. 荷受時の留意点

基本的には以下の点をチェックしてください。 ① 発熱の有無→手で触って熱くないか? ② 発酵・異臭→発酵・腐敗臭はないか? ③ 穂発芽粒→目視でチェック ④ 着色粒→赤かび粒をチェック ⑤ 水分→麦の収穫期は高温・多雨期であり、高水分麦の搬入も多くあると考えられます。荷受け時の水分仕分は、指導では2%刻みが基本ですが、仕分け容器、乾燥機の基数・能力等から4 ~5%刻みで区分して受けるのが現実的と言えます。しかし、このようなきざみで区分することが困難な場合は最低でも水分の比較的低いものと高いもの(例えば25%以下とそれ以上)に2区分して乾燥を行ってください。

2. 乾燥時の留意点

(1) 乾燥温度と水分

 小麦の加工適性上の品質と乾燥の関係では、加工上の品質が低下し始める前に、発芽率が低下する傾向が認められています。このため、高い発芽率が確保できる乾燥条件を設定します。即ち、発芽率低下を5%程度許容するとして、乾燥開始時の麦水分と送風温度との関係を示すと概ね次のとおりです。①水分40%以上:40℃以下、②水分30~40%:45℃以下、③水分25~30%:50℃以下、④水分20~25%:60℃以下。水分が20%を下回れば60℃をこえても支障がないとされていますが、穀温は40℃程度に留めるべきです。(※送風温度と穀温は異なります) 

(2) 半乾燥貯留時

 麦の乾燥時期は外気の温湿度が高いため、半乾貯留を行わず速やかに仕上げ乾燥するように努めます。また籾に比べて熱風温度を高く設定することが多いため、穀温も高い状態になっていますので、外気温度が高めでも必ず冷却パスを行ってからサイロに入れます。半乾貯留日数は3日以内と考え、乾燥機が空き次第少しでも水分を下げるように努力してください。

(3) 仕上げ乾燥

 仕上げ乾燥は12%以下(品位規格は12.5%)まで確実に実施し、水分のバラツキが無いことを確認します。乾燥中はこまめに水分測定を行い、可能であれば単粒水分計を使用して水分のバラツキ状態を把握、バラツキの大きい場合はその解消に努めてください。

3. 貯蔵時の留意点

 麦の貯蔵開始時期は気温・湿度とも高いので、穀温が高いまま貯蔵することになります。外気温が低下する時期にローテーションを行い、穀温をできるだけ早く20℃以下にすることが肝要です。
 麦貯蔵中の穀温は必ず記録し、グラフ化して監視をしてください。

赤かび病防除の徹底について

 赤かび病菌は人や家畜に有毒なかび毒である、デオキシニバレノール(DON)などを生産します。そのため、日本では、小麦に含まれる DON の基準値が 1.0ppmと定められており(2022 年 4 月施行)、基準値を超えた小麦は食品衛生法上、流通することができません。また、農産物検査規格においても、赤かび粒の混入は 0.0%以下(1万粒検査した場合 4 粒以下)と定められており、これを超えると規格外となってしまいます。
 共同乾燥調製施設等においては、荷受け段階において目視によるチェックを行い、赤かび病被害粒が多く見られた場合は必要に応じて仕分けを徹底しましょう。また、赤かび病被害粒が混入しないよう、粒厚選別、比重選別等により調製を行い、DON含有濃度の低減(1.0ppm未満)を図ることが重要です。
 粒厚とDON含有濃度の関係は、必ず一致する訳ではありませんが、粒厚が薄いほどDON含有濃度が高い傾向にあることが確認されています。

以 上